『マネージャーの実像』(著・ヘンリ・ミンツバーグ)に面白い話しがあったので、自分なりに考察してみようと思います。
その内容は、サイエンス、アート、クラフトのバランスが大事ということです。
- サイエンス(分析や理論)
- アート(ビジョンや勘)
- クラフト(経験や巧みの技)
スモールビジネス、取り分け「一人社長」と呼ばれる形態では、これらを無意識のうちに一人でやっていることになります。
本の中では、マネージャーについての話しですが、ものづくりをする人、個人事業主の方も参考になる考え方だと思います。
バランスの悪い経営者になっていませんか?
必ずしもバランス型だけが良いとも限りませんが、どれかの項目がボトルネックになって伸び悩んでいる可能性はありますので、ご自身のビジネスを一緒に振り返ってみましょう。
僕の本業では、念珠屋をやっております。
具体例としてわかりやすいように、でこの3ジャンルに具体的な業務を当てはめてみましょう。
サイエンス
経営における計算できる部分です。
マーケットの調査結果をもとに、つぎにどんな商品を開発しようか、売れ筋を分析して伸ばすべき事業、やめるべき事業の判断ということも出てくるでしょう。値決めでも重要な要素です。
究極には一種類の商品専門店というのはとても無駄がないのですが、商品の特性上、多くの種類を展開せざるを得ません。
しかも、一般的な工業製品と違って、念珠は全て手作り品ですので「自分の価格」を設定する必要があります。アートの世界のように価格は完全に自由でもなく、業界には相場もやはりあるので、その兼ね合いも考慮しなければいけません。各商品の価格に矛盾がでないように、慎重に値決めしています。
計算とえいば経理の要素も大きく関わってきそうです。
それによって、コストダウンできる経費を分析したり、節税することも可能です。
サイエンスは技術的な意味でも当てはまります。分析と理論の積み重ねが、現在の技術を作ってきた側面もあります。
実用的に丈夫な念珠にするためにはどのような構造にした方がよいか、どんな糸を使うべきか等です。それらは、仮説を立て、実験、検証の繰り返しで制度を上げていきます。まさに、サイエンス。
サイエンスの要素が強くなると、計算尽くで予想に近い経営ができる半面、数値化できない要素や、不則の事態に対するダメージが大きくなります。
アート
念珠屋が「アート」というと、芸術的な念珠のデザインということを想像するかもしれません。
もちろんそういう側面もありますが、経営ということに主眼をおくと、「ビジョン」という方がわかりやすいでしょう。
近頃は「アート思考」という言葉もよく耳にするようになりました。
これは従来の経営理論だけではイノベーションはおきにくいところを、芸術家のように、感情から湧き上がる想いや、何かに衝き動かされて思考することです。これによって、サイエンス型の経営で起きえなかったイノベーションに繋がるということはあります。
また数値化しにくい要素を含めて大枠を捉えることで、未来のビジョンを打ち出し、経営の決定要素に「勘」を加えることも、またアートのジャンルでしょう。
宗教法具として使われる念珠ですが、将来どうなっていくかを想像したときに、宗教活動でさえ、メタバースのなかで移行していくというのは、充分にあり得る想像です。そこで、メタバース空間でNFT付きの念珠を開発、販売するということも、ビジョンのひとつに入っています。
アートの要素が強くなると、洞察力が高く全体を俯瞰する力はありますが、ナルシスト的に振る舞ってしまい「自分はすごい!イケてる!」という感情に結果が付いてこないこともありそうです。
クラフト
うちは「製造・販売」を基本の業務としていますので、はたから見るとこのクラフトのウエイトが大きいと思われがちです。
実際には、その割合はとても少ないです。
以前、行きつけの喫茶店のマスターに、「念珠作らないんだったら、普段は仕事って何してるの?」って聞かれたことがあります。
その答えは簡単で、「マスターがコーヒーを落としていない時間、何をしてますか?」という逆質問で、全てわかってもらえました。
経営者というのは事業の規模が小さいほど、雑用の割合が多いです。本当は業務改善して、もっと「経営」に時間を割くべきなのですが、それは難しいことですね。
ものづくりをしている人は、経営思考までクラフトに寄りがちです。
つまり、計算や分析、またはアート的に全体を俯瞰することを重視せずに、積み上げてきた経験で舵を切ろうとしてしまいます。
僕も立ち上げ初期の頃はその傾向がありました。
とくに生活していくこと自体に必死でしたので、目の前のできることを精一杯やることは、自分への慰めになっていたのかもしれません。
ものづくりに憧れている人は「職人」という響きがかっこよく感じているかもしれませんが、そこにハマってしまうと、ビジネスの世界では利用される側になってしまいます。職人気質は、上手に運用すれば強みです。
クラフトの要素が強くなると、経験を重ねるほど決定の精度はあがります。しかし、一方で、分析結果や全体のビジョンに対して聞く耳を持てず、自分の経験だけをたよりにしてしまいがちです。
バランスよくビジネスを成長させるために
このサイトでは、スモールビジネス、とくに一人経営者や起業したばかりの人に向けて書いています。
一人または、少人数のオフィスでは、このバランスを自分一人の中でとるか、少数の限られたビジネスパートナーとチームを組む必要があります。
きれいなバランス型が良いという意味ではなく、特性を生かした展開を考える材料にするといいですね。
例えば、僕の個人的な思考のバランスは、アート要素が強く、ややサイエンス的なところもあります。
また、ビジネスを半分を支える妻はクラフト要素が強く、やはりサイエンスとして物事考えることがあるように思います。
そう考えると、アートとクラフトはそれぞれが担当し、サイエンスはお互いを補い合っていることになり、計らずともバランスが取れていたんですね。
強みを生かした経営、自分に足りない要素は何か、またどのタイプの人と組んだら弱みを補ってもらえるか。
今後の活動の参考にしてください。
この記事を書いた人
長岡慶一郎。札幌出身。システム開発、寺院仏具の仕事などを経験。合同会社長岡念珠店を経営。販売だけでなく、数珠の作り方や知識に関するオンラインスクールの運営中。現在は、経営ノウハウを生かし、スモールビジネス向けのコンテンツを発信、起業・副業したい人のための個人向けコーチングにも注力している。2022年より「まなびライフオンライン講座」もサービス開始。
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